濡れない、破れない、柔らかい。石から生まれた紙「LIMEX(ライメックス)」【SDGs】

濡れない、破れない、柔らかい。石から生まれた紙「LIMEX(ライメックス)」【SDGs】

この記事を書いている最中、阪大でiPS細胞を使った角膜の移植手術が成功し、患者の方が視力を回復したというニュースがありました。
レーシックで使われているレンズの素材は特殊な合成材らしく、この時点で素人には到底理解が及ばない「なんかすごそう」なものだったのですが、ついに人工の生きた細胞が実用化されたのですね。

何を言いたいかというと、「○年後には××は解決されて〜」のような「それ30年前から同じこと言ってない?」みたいな未来予想の話ってないですか?
私はいつの間にかそういう話題そのものが眉唾モノだと思うようになってしまった捻くれ者なのですが、どうやら世界のすごい人たちは一歩一歩実現に近づけ、私を含め世界を豊かにすることに力を注いでいてくれたようなのです。

そんな人たちに尊敬と感謝と、捻くれている自分への自戒も込めて、今回はそんな実現した未来「LIMEX」をご紹介したいと思います。

目次

LIMEXとは

LIMEXは、株式会社TBM様(リンク引用)が開発・実用化された新しい時代の「紙」です。
ご存知の通り、紙は通常は植物由来のパルプが原材料ですが、LIMEXは石灰石を主原料としています。硬い紙なの?かと言いますと、全くそんなことはなく、普通に紙として使用できるものです。
紙だけでなく、ビニール袋や屋外サインなどプラスチックなどの代替としても期待されています。

環境に、産業に

LIMEXは製造されている企業様が自らおっしゃるように、SDGsにかなり沿った製品だと考えています。ちなみに前回SDGsについて解説した記事がこちら。

パルプから製造した紙の製造工程では大量の水が使用されます。それだけの水が産業排水となる上、大量の水源が確保できる場所でないと、そもそも製造ができないものでもあります。
事実として、紙は環境に良いとは言えない製品であり、リサイクルを進めたりペーパーロスが叫ばれるようになりました。
しかし2030年には世界の人口は84億人を超え、紙の消費量は今の倍である8億トンになるとも言われており、理想と実情は逆行してしまっています。

LIMEXはここに一石を投じます。
まず、原材料は石です。世界で石が不足している国はありません。石灰石は日本にもアフリカなどの途上国にも無数に存在するため原材料に困ることはないでしょう。
そして、パルプ紙を製造する際に消費される水のわずか2%の水で製造できます。環境への悪影響をかなり抑えることができる上に、水源確保が困難な土地でも製造できる可能性が高くなります。

LIMEXはプラスチックとしての性質も持っているため、石油由来のプラスチックの製造量も減らすことができるでしょう。石油の節約はエネルギー問題にも関わってきます。
また、ほとんどそのままリサイクルすることができるのだとか。

環境に優しく、産業が明るい。そんな素材がLIMEXです。

 

そして、石灰石でできているからこそできる特徴も多く備えています。

なんと言っても1番の特徴はその丈夫さでしょう。水で崩れず、引っ張っても破れない。触った感覚はプラスチックに似ているかもしれませんが、比べ物にならないほど柔らかい。

たくさんの展開例が期待されている素材です。例えば、水で濡れても問題ないことから、災害時の避難マニュアルなどはどうでしょうか。

 

試しにいじめる

と、軽くご紹介をしましたが、こんなことどれだけ読んだところで伝わるものではないですね。というわけで実物をご用意しました。

弊社の名刺です。社長の名刺を1枚拝借してきました。

明記してある通り、弊社ではLIMEXの名刺を使用しています。少しでもSDGsに貢献していこうということで、最近変更をしました。

今回はこの社長の名刺に加虐していきます。1枚しかないので大切に加虐していこうと思います。

ちなみにデスクの上に置いて撮ろうとしたら影でまともに撮れなかったので、お菓子の空箱の裏にセロハンテープで貼り付けて光源と平行になるように角度をつけて撮りました。
テープで貼り付けても全く破れる心配がないのもLIMEXの強みですね。

 

やっていきます

まず手始めに思い切り曲げてみます。

綺麗に曲がります。紙の名刺だと、素材によっては折れ目が入ってしまうかもしれません。プラスチックでは割れてしまうのではないでしょうか。
この名刺は跡が残ることもなく、綺麗な状態に戻りました。

 

次は軽く水をかけてみます。

水もしっかりと弾きます。本当にプラスチックの上にこぼしたような感じです。水に濡れた跡や、ふやけた感じもありません。

 

じゃあ沈めましょう。

浮いてくるかと思ったら底に貼り付きました。

しばらく漬け込んでみましたが、特にふやけた様子もなし。水気も綺麗に拭き取れます。
多少の汚れなら水洗いができそうです。

 

では、今度は破いてみます。

平行に両側からかかる力には相当強く、両側から思い切り引っ張っても全くへたりません。

じゃあ本気で破るつもりでやりましょう。

 

破れない。

さすがに跡はつきます。薄いプラスチックが伸びたような状態をイメージしていただければ、だいたいそんな感じです。
結構本気で破ろうと思ったのですが、無理でした。

水につけたり、伸ばしたりしてもペンやマジックならちゃんと書き込むこともできます。

もちろん紙なので、ハサミを使えば綺麗に切ることができます。切りにくい、硬いということはありません。

ハサミを入れると、なんとなくもっちりとした独特の切り心地を味わうことができます。

切れ目を入れればそこから裂いていくこともできます。この裂け方がまた独特で、綺麗に一直線に裂けていきます。紙のように歪むこともプラスチックのように伸びることもありません。
これは何かに上手く使えそうですね。私は何も思い浮かびません。

 

LIMEXがどれだけ丈夫なのか、実際に確かめてみました。

紙の柔らかさ・軽さなどのお手軽さと、プラスチックかあるいはそれ以上の丈夫さを持っている素材であると感じました。
丈夫さはご覧いただいた通りです。名刺として使う場合は違和感なく、丈夫さというもう1要素を加えることができるでしょう。

ただ、100%紙と同じように使えるかと言えばそうではなく、折り目がつきにくい事は時として不便にも感じるかもしれません。
今回は名刺でしたので厚めだったからかもしれませんが、しっかりと折り目をつけようとしても紙のようにつけることができませんでした。
また、ペンやマジックであれば書き込むことができますが、鉛筆ではしっかりと書き込むことができません。プラスチックのような書き心地です。

まだメモ用紙の代わりにはならないかもしれません。逆に名刺や冊子など、汚れたり破損すると困るものには最高の素材です!
通常の紙と上手く組み合わせることで新しい価値が生まれるかもしれません。

 

弊社では名刺をLIMEXに変えました。名刺をご依頼された場合にはLIMEXをおすすめする場合もあります。
単純に良い試みだと自信を持っておりますし、触っただけでただの紙でないことがわかるのでちょっとした話題にもなったりならなかったり。

今はまだ名刺だけですが、今後他の媒体にも使用していけたらと模索を続けています。

 

弊社は紙媒体、webの中心にデザインやシステムを制作しているわけですが、SDGsを取り込む方法がなかなかどうして一般的な方法では難しいと感じています。

今回のLIMEXは、ある意味露骨にSDGsに沿っていましたが、なかなか目に見えた形で弊社のSDGsへの取り組みをご紹介するのが難しいのが正直なところ。

他にもご紹介できればいいなーとは思っています。気長にお待ちいただければ幸いです。

 

その後奮闘し、なんとか手で破いてやろうとしたのですが無理でした。

日頃のストレスをぶつけるのには適していないかもしれません。

 

ライター

ライター:スタッフS

スタッフS